さよなら珈琲

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アスミ:・・・あの日・・・じいちゃんが死んだ日ね、私・・・じいちゃんを散歩に誘ったんだ、このレストスペースに・・・。あんなに楽しかったじいちゃんは、病気が見つかってから、すっかり気力を無くして、ひがみっぽくなって・・・ 〇老人、太極拳をやめ、話し始める。 〇ワタル、アスミ、太極拳を始める。 老人:こんベンチも、ずいぶん薄汚れて、クッションもくたくたやなあ。なに、ここしゃぃ座れちゅうんかい、いや、沈む。ブラックホールみたいに沈んで、腰が痛うなる 老人:なに?木が、ずいぶん大きゅうなった?ばかな!ここん木は全部偽物ばい。プラスチックで出来とー。ナイロンとかポリエステルとかレーヨンとかで出来とるんや 老人:わしん好きなコーヒー?いらん、いらん、あげなんなー、本格でもなんでんなか。ボタンば押したら、中んタンクに入っとーコーヒー液が、こげんふうに、ちゅーって、カップに注がれとーだけばい。 〇アスミ、太極拳の動きで、なんとなく上を示す。 老人:なに?見上げる?天窓ん外ばか?ああ 、 見えてきたんやなあ・・・だばってん、わしゃ、もう辿り着けん。ああ、小しゃい、小しゃいねぇー、色も、薄うて、くすんで・・・ 〇アスミ、動きをやめて老人と対峙する。 アスミ:じいちゃん・・・ 老人:地球が懐かしか アスミ:じいちゃん! 老人:なんでわしは、こげんところにおるんやろう。なんでわしは、こげんところに来てしもうたんやろう! アスミ:いいかげんにして!私・・・もう帰る 老人:アスミ・・・ アスミ:来ないで!じいちゃんは、ずっとここにいて、ずっと愚痴ってたら! 〇アスミ、踵を返す。 老人:アスミ・・・おい、どげんしたんや、アスミ・・・アスミ!・・・ああっ!うぐぐっ・・・ 〇老人、胸を押さえて苦しみ倒れる。しばらくして、起き上がり太極拳を始める
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