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祖母があちらの世界へと旅立った時、私に残してくれたのは、地機だった。
結城紬を織るための機だ。
低い位置に置かれ、織り手がたて糸を腰に回し、全身で織り上げるところから、いざり機とも呼ばれる。
農家で生まれ育ち、また嫁いだ祖母の、冬の副業だった。
その音が大好きだった私に、祖母はこの機の扱い方を教えてくれた。
私はすぐに夢中になり、祖母の後を継ぐことを決めていた。
「これだけじゃ食べていけないよ」
祖母の言葉は本当だった。
どんなに好きで、誇りを持って織っていても、実際はパートに出て小さな畑も耕してようやく暮らせるくらいだ。
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