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人づきあいは苦手な私だけれど、この仕事は、沢山の手を経て成り立っている。
手で糸を紡ぎ、手で糸をくくって、絞り染めの要領で防染する。
そうやって染められたたて糸とよこ糸を織って、ようやく絣と呼ばれる模様ができる。
どの工程をとっても数ヶ月かかる、正気とも思えない作業だ。
ひとつひとつが出逢い。
農作業が終わった後の、きっとクタクタだろう身体で、しなやかでハリのある糸を紡いでくれる、農家のおかあさんたち。
紡がれた糸をバトンタッチされるのが、絣くくりの職人さん。
ほとんどが力の要る男性の仕事だ。
手紡ぎ糸の太さや癖は、ひとりひとり違う。
それをうまく適材適所に割り当てて、気の遠くなるような作業を繰り返す。
ほんの少しでも間違えれば絣模様は合わなくなる。
彼らは心を込めて色を防ぐ。
染めに携わる職人さんは、くくられた力加減を見極めながら糸を染める。
どれをひとつとっても、絶対に同じ状況はない。
全て一期一会。
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