4.藤倉くんと待ち合わせ

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って観察してないで、待たせてるんだからそろそろ待ち合わせ場所まで行かなくては。 待ち合わせ場所に近づくと、それまでスマホに夢中でずっと顔を伏せていた藤倉がパッと顔を上げた。その視線は交差するたくさんの人をすり抜けて、真っ直ぐに俺を捉える。 こんなに人がいて、まだ声が届くか届かないかくらいの距離があるのに何で分かったんだ。そんなに特徴があるわけでもない俺を一瞬にして見つけるなんて…。 もしや嗅覚か?あいつはマジで犬科なのか? 「澤くんっ!」 俺と目が合った瞬間それまで無表情だった顔が途端に花が綻ぶような笑顔に変わり、ざわっと周囲が色めき立つ。 そのまま俺の方へ小走りで駆け寄ってくる表情は、俺の知ってるいつもの藤倉だ。 「まだ10分前なのに早かったな。待たせて悪かった」 「んーん全っ然!俺もさっき来たと、こ…」 と、何かに気づいたように突然少し頬を赤らめる藤倉。 風邪か?と思ったが元気そうだし、そうでもないらしい。 「大丈夫か?」 一応聞いてみる。 「いや、まさかこんなベタなやり取りが出来る日が来るなんて…」 あぁ、そんなに友達と遊ぶのが嬉しいのかな…。いや、そこまで感動するか? それにしても、さっきからやたらと周りに見られている。ふと目が合ったのは、藤倉にいつ声を掛けようかチャンスを窺っていた女の子たちだった。心なしか睨まれている気がする。 まぁ、(変態だけど)こんな美形の待ち合わせ相手には一体どんなすごい奴が来るのかと思ったらとびきりの美女でも美男でもなく、特に格好良くもないこんな平凡野郎が来たんだ。そりゃ「何で?」って顔にもなるよな。なるかな。放っといてくれよ…。
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