4.藤倉くんと待ち合わせ

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4.藤倉くんと待ち合わせ

約束していた週末。学校ではしょっちゅう顔合わせてるし家にもお邪魔したことはあるが、わざわざ待ち合わせなんてして外で会うのは初めてかもしれない。たまたま街中で遭遇したことはあるけれど、待ち合わせっていうとまた違う特別な感じがする。 まぁ俺の買い物に付き合ってもらうってだけなんだけど。 それにしても、待ち合わせ場所ちゃんと分かるかな。駅前だし人が多い所だから見つけられないかも。 そんなことを考えながら待ち合わせ場所付近に到着すると、その心配が杞憂だったと瞬時に分かった。いやいやいや、かなり分かり易い。分かり易過ぎる。 確かに人は多い。しかし一極集中で、女子率が圧倒的に高い場所がある。その中心に囲まれるようにして立つスラッとしたモデルのような身体は、制服の時とは雰囲気がまた違ってやけに大人びている。外出すると何故か藤倉に遭遇することが多いこともあって奴の私服姿はこれまで何度か見たことがあるが、今日は一段とお洒落で、悔しいが格好良い。 制服よりもタイトな黒のパンツは奴の足の長さを一層際立たせているし、服装はモノトーンで統一されているのに、明るめの髪色と赤のスニーカーがワンポイントになっていて全体的にバランスが取れている。 ラフな服装の癖に何なんだあの存在感。 Tシャツだけでも様になるくせに、きちんとした外出スタイルは一際人目を引くようだ。 …芸能人かよ。なんて思っていると、何やらスーツの男性に名刺を渡されているのが見えた。あれはまさか、スカウトか? スカウトとか本当にあるんだ…。初めて見た。いつも一緒に居るせいで俺の美的感覚の方が鈍っていたのかも知れない。いくら学校での奴を思い返してみても変態で意味が分からない行動や言動の数々が浮かぶのみだが、それでもあいつはスカウトされるくらい格好良かったのか。 …何か納得いかない。 しかし一人で木陰に立つ藤倉の周りはやはりキラキラとしていて、いつ声を掛けようかじりじりと距離を詰める女の子達で一杯だ。モテるってのも大変なんだな…。俺にはきっと一生分かる事の無い苦労だろう。
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