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2.飼い主と大型犬
「花だ」
「花だな」
「花が見える」
「奇遇だな。俺にも見えるわ」
主に藤倉くんの周りに…。
休憩時間。教室の窓から、恐らく校内一有名であろう二人が通り過ぎるのが見えた。それを見たクラスメート達は一様に同じことを考えていたようだ。
「私にも見えるわ!!」
「うぉっ?!藤倉ファンクラブ部長?!」
突然立派な一眼レフを手にした女子生徒が会話に割り込んで来たかと思うと、直ぐに二人が消えた方向へと小走りで去っていった。その後も凸凹コンビの後を追うように、颯爽とカメラを持った数人の女子生徒達が通り過ぎていく。きっと我が校のアイドル的存在のベストショットを狙っているのだろう。
「…廊下は走らねーんだな。一応校則は守るのか」
「一眼レフはセーフなの?」
「さあ。今日も平和だしいんじゃね」
「…なぁ。てかあの二人ってさ、何であんなに仲良いの?」
「え、今更それ聞くか?」
「だって何か接点とか無さそうじゃん?中学もちげーし」
「っていうか藤倉と接点ある奴ってやっぱそういう…?いやでも澤はそんなんじゃねぇしなぁ」
「澤は確か一年の体育の授業から話すようになったって言ってたぞ。クラス隣で体育は合同だし、よくペアになるからって」
「いや、ちょっと待てよ…。おかしくね?体育合同なのはともかくさ、名前順でも背の順でもペアになるかな。『さ』と『ふ』だぞ」
「………」
「………」
「…あ、やべー次の英語の宿題やってねーわ」
「俺も辞書借りてくるわ」
「この話はこんくらいにしとくか…」
「お、おう。まぁ藤倉くんも噂ほど悪い奴じゃ無さそうだし、」
「澤も何だかんだ楽しそうだしな」
藤倉の過去に関しては、校内でも知っている者と知らない者が半々くらいだろう。何と言っても見た目と雰囲気が中学校からガラリと変わっているせいで、例え中学校時代の彼を知る者でも気付かないパターンが多い。
しかし藤倉の澤に対する執着については言わずもがな周知の事実であり、それに関しては深く突っ込まないことが男子生徒の間では暗黙の了解となっていた。
一方女子生徒はそうでもないらしく、先程の通り二人を応援(と言っていいのか分からないが)する者、構わず藤倉の彼女の座を狙う者など様々だ。
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