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洋斎は、美少年の瞳で実香を見つめ返した。
「言ったろ。俺はその為に来たんだ」
その、はにかんだ声は、洋斎もまた実香に心を奪われているように聞こえさせた。
「じゃ、その時はよろしくね!」
明るく言って教会の中へ入って行く実香を、洋斎はまた唇を尖らせて見送った。
○
「これは愉快。その表情からして、おぬしもあのおなごに惚れたようじゃな?」
急に頭上から降って来た声に、洋斎は口を尖らせながら、教会の脇にある大きなケヤキの木を見上げた。
「それにしても、洋斎を持ってしても落とし切れぬとは、恐るべし祥仙の呪縛じゃな──」
ケヤキの枝に、柳のような足を垂らして座りながら英斎が言うと、別の枝に丸い足を投げ出して座る貫斎が鼻で笑った。
「なぁに、黒魔術さえ解いてしまえば、彼女たちの洗脳も綺麗さっぱりさ」
洋斎は、ちょっと眉を上げて言った。
「やはり黒魔術か──」
「おおよ、全てはお前の読み通りだ」
答えた貫斎の知識は、全て英斎の受け売りなのだが、それを知らない洋斎はギラと眼を光らせた。
「ならば早速、その祥仙神父とやらを退治してくれるか!」
だが、教会の方へ身を乗り出した洋斎を、英斎が静かな声で引き留める。
「まぁ待て。それでは祥仙の真の狙いが見えて来ぬ」
「ならばどうする?」
「ここはしばらく、泳がせておく」
「歯がゆい!」
また唇を尖らせた洋斎に、英斎は穏やかに笑って言った。
「いや、退屈はさせぬ。今夜もう一度、三人で教会に忍び込もうぞ。すれば面白いものが見られるはずじゃ」
○
──その夜が来て、英斎、貫斎、洋斎の三人は予定通り、再び教会の中に忍び込んだ。
いや、そのはずなのだが、今度は一体何処に潜んでいるのやら、昼間の壁画の中は勿論、三人の姿は何処にも見えなかった。
したがって、祥仙神父は何も知らない。何も知らないまま、薄暗い大聖堂で、大きなテーブルの前に立っている。
テーブルの上には、例の三人娘が横になって並んでいた。眠っている、と言うよりは眠らされている、と言った寝顔であり、寝息である。
そして、彼女たちは皆、全裸であった。
「よし。裏切りは見当たらぬ。──三人とも、男を知らぬ清らかな肉体を保っておる」
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