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三 『黒魔術?』
「どうした貫斎、顔が紅くなっておるぞ」
英斎に言われて、貫斎は口ごもった。
「ほう。その様子からして、おぬしの方はこっちのおなごに惚れたようじゃな」
貫斎は言葉が出ない。英斎の指摘が図星だったからではなく、半裸の優奈に見とれてしまっているのだ。
「ふむ。きめの細かい肌、丸くて大きくて、それでいて形の良い乳房、確かにこっちのおなごも美しいのう」
ダラーッと鼻の下を伸ばした英斎に、貫斎はやっと我に返った。
「こらエロじじい。イヤらしい目で見るんじゃねぇ!」
「まぁ許せ。見るなと言われても、あの乳房から目を離すわけにはいかんのじゃ」
英斎は鋭い目つきになって言った。依然、鼻の下は伸びたままだったが…。
「お前も彼女の乳房をよく見てみろ。いや、正しくはあの豊満な胸の谷間じゃが──」
キッと怒った眼をしたまま、それでも貫斎は言われた通りに優奈の胸元に目をやった。
ゴム鞠みたいにムチムチで、今にもはち切れそうな優奈のふたつの乳房は、少し動いただけでも下着の中から飛び出しそうな弾力。だからそこに出来上がった胸の谷間たるや、貫斎は桃源郷を見つけた気分だった。
「ん?何か挟まってるな…」
確かに優奈の胸の谷間には、何やら小さく平たい物が挟まっていた。それは指先ほどの茶色い欠片、隙間無く乳房に圧迫されているが、どうやら硬そうな塊だ。
二階から見下ろすような位置関係で、そのような小さな欠片を発見できてしまう貫斎の視力には驚くが、さすがに物質の特定には至らない。
「木の皮か、松ぼっくりの欠片か?」
ジーッとそれを凝視する貫斎に、英斎はあっさりと言った。
「キリストの爪じゃよ」
「キ、キリストの爪?」
貫斎はギョッとした。そのような物がこの世に存在し、しかもそれが今、自分が一目惚れした優奈の胸の谷間に挟まっていたことに。
「真贋については何とも言えんが、十四年に一度、聖夜に公開されているらしい」
「なかなかの悪趣味だな…」
「何でも、あれを食せば、神になれるとの伝説もあるそうじゃ」
また貫斎はギョッとした。
「益々気色悪い話だ…」
「そして今年がその十四年目。よって十二月二十四日が来れば、世に公開されるはずじゃ。まして今回のお披露目は、日本らしい──。おぉ、だからこそ今、ここにあるんじゃな」
「おっ、あのエロ神父、何をしやがる!」
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