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嵐のあと
【210年】
シトシトと小雨が続く。
三日ほど嵐が続き、カイの家は雨漏りだらけだった。窓の鎧戸を開け外の様子を確認すると、開けた窓もそのままにドアから外へと飛び出し、少し離れた場所でその家を眺める。
「これは……早めに直さないとな」
嵐のせいで所々屋根が飛ばされてしまった。
両親が遺してくれた家は、カイが一人で住むには少し大きすぎた。最初はそれを随分寂しく感じていたものだが、一人の生活にももう慣れ、孤独を理由に涙を流す事などもう忘れた。
ほんの小さな雨粒が鼻を掠めたのに気が付き、カイは空を見上げた。相変わらず灰色の重たい雲に埋め尽くされているが、所々に弱々しい光の筋が見える。この調子だと昼にも晴れるだろう。
辺りを見回すとだいぶ風で荒らされている。木々は倒れているものもあり、崖崩れも少し起きている。
嵐のせいで見慣れた景色は随分と変わっていた。まだ小雨が降っているが、もう三日も外に出ていなかったカイはじっとしている事ができず、散歩をすることに決めた。
「静かだなぁ」
とは言ってみたものの、いつも静かなのだった。ここにはカイ以外誰も住んでない。
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