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チビは機敏に首を動かすと、すぐにその軌道を目でとらえた。翼を二、三回羽ばたかせ、その体を高く空に浮かせると、一点の迷いもなく目標に向けて滑空し、あっという間に鋭い爪で鳥を掴んだ。
チビはそのままカイの元へ飛んで戻ると、羽をばたつかせる鳥を地面に押さえつけ、一声鳴いた。
カイはまだ膝をついたままだ。その姿勢で一連の行動を息を飲んで眺めていた。
「なんだよお前、できるんじゃん!」
チビは得意気な顔を見せ、獲物にとどめをさした。それをくわえてカイの近くに落とす。
チビはカイの不思議そうな顔を黙って見上げている。
「これ俺に?」
あんなによく食べるようになったチビに、まだ朝食も与えてない。相当腹を減らしているに違いない。それなのに、目の前にある好物に手をつけず、カイに食べろと言っているのだ。
カイは自分の胸と目頭が熱くなるのがわかった。目の前にいる、将来人類を脅かす存在になる可能性を宿すドラゴンを、心底愛しいと思った。
たとえ先のチビの行動がただの気まぐれだったとしても、しぼみかけていたカイの心には十分すぎるほどの活力を与えた。
「ありがとう」
カイはそのままそっとチビを持ち上げると、両手で強く抱き締めた。
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