カイ・下

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カイ・下

 自分はもしかしたら飛び道具全般が使えないのかもしれないと感じた。これはかなりまずい。一刻も早く克服しなくては。今までは運良くドラゴンが現れなかったけど、これからも現れないという保証はない。  今までなにも考えずにのんびりと過ごしていた事を自分で軽蔑した。今になって危機感が沸き上がってくる。  一ヶ月に一度、砦から兵士が報告書を取りに来る。カイがまだ若く、両親を亡くしたばかりと言うこともあり、この仕事を続けられるかをいつも確認される。  それなりの報酬を貰っているのだ。責任を果たさなければならないし、両親の顔に泥を塗るわけにはいかない。  カイはチビを抱き締めながら、そんなことを考えていた。家の物置にいくつか近接武器もあることにはある。小熊くらいならやっつけたことがあるが、翼を持つドラゴンとやりあうには一人なら出来れば飛び道具を使えた方が良かった。  突如腕の中のチビが落ち着きを無くし、翼を震わせ始める。不思議に思ったカイはチビの顔を覗き込んだ。  チビは小さな顔を崖の方へ向けて鳴いている。カイが同じ方向に視線を走らせると同時に、崖の下から何かが姿を現す。  目を疑った。     
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