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チビと過ごしてドラゴンへの理解を深める中で、その「仕方がない」という気持ちは徐々にカイの心のなかに骨組みを作り始めていった。
自分達人間が、獣を狩りその肉を食べて命を燃やしているように、ドラゴンもまた、生きるために人間を食べるのだ。それは自然のなり行きであり、誰かが止めることも出来ない。
そんなこと、わかっている。
当たり前のことだ。
だけど、だからといって黙って食べられているわけにもいかない。
それが嫌なら戦うしかないのだ。
そうして戦って負けた。それが結果だ。
――率直に言って、我が子はもう人間の手によって殺されていると思っていた。その時には町のひとつでも壊滅させるつもりでここへ来た。だがそうではなかった。君の事を私は覚えている。あんなに酷いことをした私の子を、君は一体どんな気持ちで助けてくれたんだ?
ドラゴンはそう語りかけた。考えがぐちゃぐちゃになっているカイの頭には、なぜこんなことを話しかけてくるのかがわからなかった。
「お前の子供だなんて知らなかった」
震える声でそう答えた後、自分を見上げるチビの顔をカイは見ることができない。
――知っていたら殺していたか?
「ああ」
そう言い捨てるとチビを腕から解放した。
地面に降りたチビは、まだ首をかしげてカイを見つめている。
――私にはそうは思えない。
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