使命

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【210年】 「君が母と交わした契約が切れる時とは、二人が死んだ時だ。さっきも言ったように母はすでにこの世を去っている。つまり、君が死ねばあの壁はなくなる」  ヴィダルは数ある話(はな)さなければならない事の中から、まず結論を伝えた。  カイは表情を変えることもなく黙ってそれを聞いているが、返事をすることもない。ただヴィダルの言葉を一言も聞き漏らさないように集中している。 「君の死後の事だ。関係ないと言えばそれまでだが……」 「ちょっと待って。質問したいことがあるんだけど」  ヴィダルの言葉を頭で反芻に反芻を重ねたカイがやっと声を上げる。 「聞こう」 「俺ってさ……死ぬんだ?」  ドラゴンが契約によってその魔力を使うとき、その魔法の規模があまりにも大きいと自身の命を燃やすことがある。ヴィダルの母親が行ったことがまさにそれだった。  彼女は自身の寿命を使い、さらにカイにもそれを分け与えたが、魔法に使った寿命が莫大すぎて本来カイに与える生命力を少し削る形になった。カイにはもっと力を与える筈だったが、想定外の魔力の使用量に彼女の予定は狂った。     
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