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「また話が反れてしまった。壁が無くなっても暫くは気付かれずに過ごせるだろうが、何かのきっかけでドラゴン達に気付かれたらもう国を守るものはない。あとは彼らの戦いだ」
カイは考えた。
百年もドラゴンが現れなかった国は、もう彼らと戦う術(すべ)を忘れてしまっているかもしれない。あの時ドラゴンと戦っていた者たちはもう誰も残っていないだろう。そんなときに襲われたらどうなる?
もう悪い予想しか出来ない。
「俺が無責任に望んだ願いは結局人間を苦しめることになっちまうのか。ドラゴンは人間を食べることを、忘れたりなんかしないよな」
追い討ちを掛けるようにヴィダルは言う。
「気を悪くさせたらすまない。……ドラゴンにとって人間は……その……、とても美味い、と聞く。もちろん食べなくても生きられるが、見つければ積極的に襲うだろう。それに長い間食べられなかったものだから、反動(リバウンド)がある可能性も考慮してくれ」
最悪だ。
俺は何て事をしてしまったんだ。
「だがもう君の知る人間は生きてはいないんだろう?」
「でもあいつらの子供や孫がいるかもしれない。それに知らない人間だとしても、俺のせいでそんなことになるなんて駄目だ」
いつも深く考えずに瞬発的に行動してしまう。目先の事に囚われて、それが後になって不幸な結果になることを、彼はこれまでの人生でいくつか経験している。
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