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因果
「でも、……まだ、聞きたいことがあるんだ」
カイが視線を落としながら言う。その様子はなぜか弱々しく、いつものカイらしくない。まるで何か、言いにくいことでも切り出そうとしているように。
「言ってみろ」
ヴィダルの声に一度目を上げたカイは、困ったような顔で口を開くのをまだためらっている。それは他人に何かを遠慮している時の顔だった。
「ルシアのことか? 彼女は恐らく ……」
その名前を聞いた途端、堰(せき)をきったようにカイは吐き出した。
「ずっと、気になってて……ルシアは何も知らないんだ。なのに俺と同じ契約印が、同じ場所に……。壁を越えられない制約も同じ、契約印が体に現れたのも俺が契約した歳と同じだ。何か関係あるのか? 話せないっていうなら、仕方ないけど……それに俺は彼女をまた一人ぼっちにして死ぬのがすごく心配だ」
「……契約印を見たのか? じゃあ間違いないな……どうか自分を責めずに聞いてほしい」
その言葉にカイは胃が痛くなった。それにヴィダルの顔は、明らかに良い話を始める表情でない。
「結論からいうと、ルシアは君と同じ内容を……契約を、結んだ事になっている。自分の知らない間に」
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