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いつの間にか日が高くなっている。
ヴィダルはルシアのいる小屋へ向かった。
ドアを明けた途端、中の暗さに驚く。
――そうか、窓を開けてやらなくては。
不格好な窓に向かいながら、ヴィダルはなるべく明るい声でルシアに声を掛けた。
「おはよう」
おはよう、とすぐに返事が返ってくる。
全ての固く開きにくい窓を開けると、小屋は見違えたように明るくなった。
ルシアはヴィダルに礼を言った後、小屋の入り口の方を見ている。カイを探していることがすぐにわかった。
「カイは、その……ええと、自分の舌で瞼(まぶた)を舐めないと家から出られない病気になって……いや、心配しないでくれ、たぶんすぐ治るから、と言っていた」
「まぁ! それは心配せずにはいられないわ。大丈夫かしら……」
深刻な顔でその嘘を信じるルシアを少しの間眺めた後、ヴィダルは自分の意思とは全く関係なく、自然に口を開いていた。
「君はもしそこへ閉じ込められていなかったら、幸せな人生を送っていたか?」
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