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ルシアは驚いた表情でヴィダルを見た。まばたきも忘れて何かを考えている。突然の質問に戸惑っていることを、ヴィダルは読み取った。彼は踏み込みすぎたこと、勝手に開いた口に驚いて、すぐに質問を取り下げた。
「すまない、変なことを聞いてしまった」
ルシアはまばたきを再開する。そして、少し間を置いてから答えた。
「毎日大切な人達が近くにいて、美味しい食事を頂き、暖かいベッドで眠る。それが日常で当たり前で何も感じていませんでした。ここで過ごした長い時間がなければ、それがどんなに幸せなことだったかを気づかずにいたかもしれません」
ヴィダルはルシアから目が離せなくなった。
「でも私は今も、幸せよ」
そう言って笑顔を見せるルシアを見て、カイがこの人に惹かれる理由をとてもよく理解した。
ヴィダルには、そのルシアの心が彼のと同じに美しく見えたのだった。
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