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手紙
「一週間くらい前だったと思うよ。カイのやつ、傷だらけの顔で肉をたくさん買いに来てさ。宴会でもやるのか? って聞いたら、『まぁね』って嬉しそうに笑ってよ。俺は久しぶりにあいつのあんないい顔を見た気がするなぁ。可哀想に。あいつはきっと不幸の星の下に産まれてきちまったんだろうな」
壁が現れたことを知ってすぐ、マチルダが町の知り合いにカイの事を聞くと、肉屋の店主がこう話してくれた。それが最後の目撃情報となった。
カイを知る町の人々はまた彼のことを心底不憫に思い、鍛冶屋の親父などは彼のために泣いた。
その日いつもよりも随分早く起きたミーケルは、着替えてすぐに馬を出した。
壁を調べてやる。あの壁は一体どこまで続いているのか? 終わりがあるのなら、そこからカイの家まで行けるかもしれない。
ミーケルはひとまず森の奥の、あの壁を目指した。天気はよくすがすがしい朝だ。こんな日に早起き出来たなんて運がいい。気分も上々だ、あの壁さえ無ければ。
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