冷たく優しい手

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「君が思っているほど彼女は弱くない。でも、彼女が君を惹き付けるのがよくわかった。私が人間でなくてよかったな? カイ」 「は? どういう意味……」 「私が恋敵なら勝ち目がないだろ」  ヴィダルの不敵な笑みを見て、カイは目を丸くする。 「……チビのくせに生意気言ってんな」  一体どこでそんな言葉を覚えてくるのだろうとカイは思った。  こうして人間の姿のヴィダルと話していると、自分は人間で、彼はドラゴンだと言うことを時々忘れそうになる。いや、むしろヴィダルが人間じゃないということを、時々しか思い出さない。  こんな風に、ドラゴンと人間が仲良くやっていくというのは難しいことなんだろうか。 「ヴィダル、お前は俺を食べたいと思わないのか?」  薄暗い森の中、ヴィダルが持つランプと彼の瞳だけが僅かに光を放っている。  前を向いていたヴィダルが少しだけ顔をこちらに向けて答えた。 「君は可愛がっていたペットが実は最高に美味いと知ったら、食べるのか? ……それと同じことだ」 「俺はペットか?」  ヴィダルは涼しい顔で笑いをこらえている。 「……けど、無神経なことを聞いた、ごめん」 「いいさ。犬に噛まれたと思って忘れるから」 「……本当に賢いドラゴンだな」  カイには少しだけ分かっていた。     
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