冷たく優しい手

7/7

4人が本棚に入れています
本棚に追加
/151ページ
 冷たくて、少し震えている。  触れあう瞬間にまた閃光が走った。カイは彼女の細い手を強く握りしめると、急いで檻の中へ押し戻した。 「大丈夫か!? 痛かったろ、ごめん」 「ちっとも」  いたずらっぽく笑うルシアの顔は少し赤く見えた。ランプの色でそう見えただけかもしれない。  カイの悲しい気分は徐々に静まりを見せていた。  まだ手にはルシアの冷たい温度が残っている。カイはその感覚を忘れないようにもう一度拳を握ってみる。  爪が手のひらに食い込んだが、痛みを感じない。  カイはもしこの檻がなければ、ルシアを抱き締めていたかもしれないと思った。
/151ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加