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2つの苦しみ
ヴィダルは耳障りな音で目を覚ました。
いつの間に眠ってしまったんだろうと、すぐ隣に視線を移す。
いつもは自分の方が先に目を覚ますのに、今日彼の姿はそこになかった。
光が差し込む窓を両手で軽く押せば、さらにたくさんの光と冷たい風が頬を撫でる。さっきは耳障りと感じた薪を割る音が、今度は小気味良く響いて聞こえた。
「おはよう。少しは寝たのか?」
ヴィダルの声に振り向いたカイの笑顔は爽やかだったが、どこか疲れているようにも見える。その額には汗が滲み、頬を伝った。
「私がやろう。君は寝てないんだろう? 少し休んだらどうだ」
「大丈夫! もう終わったし……それより昨日の続きだけど」
どう切り出そうか少し考えていたのに、カイの方から口を開いて来たことをヴィダルは意外に思った。もうしばらくは気分を落ち込ませていると考えていたからだ。でも、これから先話すことで落ち込ませてしまうかもしれない。
「君の、祖国を守りたいという願いだけなら叶えられる」
カイは目を見開いてヴィダルの次の言葉を待った。
「今度は私と契約を結ぶんだ」
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