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ルシアはもう起きていて、突然差し込んだ朝の光に目を細めた。そこには、いつも通り深刻そうな顔をしたヴィダルと、息を切らしながら先に入ってきたヴィダルを追いかけてくる、不安げなカイの表情があった。
何かただごとではない雰囲気を悟ったルシアは、挨拶も忘れて思わず立ち上がる。
「どうしたの?」
「話があるんだ」
「待てよ、ヴィダル!」
腕を掴むカイに、ヴィダルは鋭い眼差しを向けた。
「悪いが大人しくしていてくれ」
ヴィダルがカイの腕を人差し指でトンと叩くと、カイは先までの勢いが嘘のように静かになった。腕はヴィダルを離し、檻のそばにぎこちなく腰かける。カイは目を白黒させて口をパクパクと開くが、その声は聞こえてこない。
「魔法で自由を奪った」
驚くルシアはただ目を丸くして、声を出すことも忘れている。
「今から話すことを、信じられないかもしれないがとりあえず聞いてくれ」
ルシアを見つめながら放たれたその言葉は、カイへの言葉でもあった。
「私は実は人間でない。ドラゴンなんだ」
表情ひとつ変えずにそんな事を言うヴィダルを、ルシアはただじっと眺めていた。過ごした時間は短いが、こんなつまらない冗談を言う男性ではないとルシアは知っている。そして、カイがいつか話してくれたことと、ヴィダルの言葉は結び付く。
「……カイと契約したドラゴンがあなたなの?」
「いや、それは私の母なんだ。やはり君は聡明な人だ。話が早い」
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