手紙

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 忌々しい壁が見えてくると、ミーケルは壁にそって北へと馬を走らせた。壁から目を離さないように、何一つも見逃すまいとして走り続けた。だが、走っても走っても壁の終わりは来ない。一時間ほど走ったが壁はずっと続いているし、その先を見ても自分の視力が許す所まで壁は続いている。ミーケルは途方に暮れた。  一体この壁はどこまで続いているんだ。  どこかで鶏の声が聞こえる。もうそろそろ砦へ行かなくてはならない時間だ。  ミーケルは名残惜しそうに向きを変えると、そのまま砦を目指して森を後にした。  本当に不思議で仕方が無かった。あんなにも長くて巨大な壁を、短期間に誰にも気付かれることなく作ることが誰に出来るんだろうか?  どんなに頭を捻らせても、その答えは当たり前のように浮かんでこなかった。   ・  ミーケルは壁のことを報告すると同時にカイの救出も懇願した。何しろ町のなかでカイの家だけが森の外れにあり、運悪く壁は町とカイの家の間に出現してしまったのだ。あんな高い壁を一人で越えられるはずもない。城へ助けをもとめたところでどうやって救出するのかはわからないが。  とにかく、壁の外にも人間がいるということを伝えたかった。森の方には店もなく、他に住人もいない。もしカイがこのまま町に戻れないと、彼は一人で森で生きていかなければならないのだ。確かに彼には家族はないので今までも一人で生きてきたが、それまではこんな壁などなかったのだから。     
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