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それでもルシアの犠牲は免れない。
「ただ君がこの方法に納得できないなら、契約を結ぶことはできない。その時は静かに死を待つだけだ。私は君が選んだ方に従う。そしてそれに全力を注ぐ」
一方ルシアはこう言った。
「何も迷うことはないわ。この国を守りたいのは私も同じ。ただ無駄に命を長らえるより、そっちのほうがずっといい。私はそうしたい」
この国の人達を危ない目に合わせることをしたくない。それは、カイの揺るぎない願いであり責任だった。だが、二人の大切な者の命や寿命を奪ってまでそうしたいのかというと、それは違うと断言できる。
決めることができない。
それなのに、その選択をしなくとも時間は無情に刻一刻と迫り来る。
「……さっきはごめん」
「いや、私が卑怯だったんだ。君は怒って当然さ」
落ち着いたあと考えると、自分の事を思ってしてくれた行動だったというのがよくわかった。そもそも、自分の生涯を全てカイの為に使っているようなヴィダルのいままでの行動に、なぜ気遣いを読み取れなかったのか。
「……俺、わからないよ」
感情を抜きにすれば本当はどうするべきなのかわかっている。
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