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ごく薄い羊皮紙の中にその答えは包んであった。薄すぎてここからほとんど中身が見えている。だが、開けることができないのだ。開けると羊皮紙は破れて元に戻せなくなる。その覚悟が自分にはなかった。
「君が決めるんだ」
ヴィダルのその言葉が重苦しくカイの心にのし掛かった。
「明日の朝、答えを聞く」
・
朝が来るのをこんなに嫌だと思ったことはない。考えても考えても自分の納得できる答えが見つからない。真っ暗な闇に飲まれて、このまま目を覚ましたくないとさえ思った。
今、寿命がつきればいいのに。そうすれば、どちらかを選ぶなんて事をしなくて済むのだから。
ふと、いつかヴィダルの言ったことを思い出す。
――魂は永遠だ。お互いが強く思い合えばまた必ず巡り合う。
そう彼は言った。
振り返るととても長い人生だった。それでも、死ぬ間際に二人と過ごした時間はとても幸せな時だった。自分達が死んだあと、次の世界で生を受けられるとしたら、また二人に会えるだろうか? そのとき自分は胸を張って笑うことができるのか?
カイは闇の中で恐る恐る目を開いた。
この選択から逃げることは、二人から逃げることだ。
自分はどちらを選んでもきっと後悔する。それなら、最善の結果になるようにしっかりと向き合おうと腹をくくった。
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