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檻の鍵
「良ければいつでも……。私の準備はできてる。もちろん今日でなくてもいいが」
ヴィダルはあまり深刻な顔にならないよう意識しながらカイにそう告げた。
カイは頷く。鳶(とび)色の瞳から生まれた、まっすぐな視線がヴィダルをとらえた。
ヴィダルはまだ夢の中にいるような気分だ。百年間待ち続けたこの時を、まだ実感できないでいる。待ち続けたと言っても、それを楽しみにしていたわけではない。かといって望まなかったと言えば、それも嘘になる。
ただカイの最初の望み、レダを守っていくという願いを壊したくなかった。それを目標に生きてきたからだ。例えそれが様々な絶望を携えていたとしても。
「すぐに始めよう。だけどその前にルシアに話したいことがある」
カイはヴィダルの顔を見たあと、次にルシアに顔を向けてそう言った。少しの間、空間に沈黙が生まれる。
「……私は席を外そう」
何かを察したヴィダルはドアへ向かうが、カイはその腕を掴んで呼び止めた。
「ここに居ていい」
ヴィダルは不思議そうな顔でカイを見つめたが言葉を返すこともなく、大人しく足を止める。
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