手紙

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 このときは返事をすぐにはもらえなかった。まずミーケルのような下の立場の者は、王に会うことすら許されないのだ。それに砦から城はかなりの距離があり、伝達もすぐには届かない。ミーケルは自分の部の隊長に報告をした。救いは隊長がとても親身になってこれを聞いてくれたことだけだ。そして、これを終えた今あとは待つことしか出来ない。  だが 数日後、城の者に伝えられたことはこうだった。 「何人(なんびと)も、壁には近づくな」  カイの存在のことなど、まるで最初からなかったかのように。その件についての連絡はいっさいもらえなかった。ミーケルは白くなるほど拳を握りしめた。まばたきができなくなった。  カイが町に来なくなって一週間以上が過ぎている。大量に買い込んだという肉も、もう底をついているんじゃないだろうか? 突然現れた壁を見て途方にくれているに決まっている。あいつには家族もいない。ひとりぼっちで、あんな森で。どんなに不安だろう。俺がしてやれることは何かないのか?   ミーケルは思わず憎らしい壁の方を睨み付けた。もちろん、森から遠く離れたこの砦からではそんなものは見えない。ここから見えるのは石畳のカベと、訓練に励む熱苦しい男達だけだ。   ・  その晩、ミーケルは同期であり友人のスーパを食事に誘った。 「なんで自分の家で飯を食うのに奢られなきゃならないんだ?」  ラックスの酒場でスーパは唸った。何を隠そうスーパはラックスの息子だ。  どうせなら違う店で一杯やりたかった、と文句を垂れるスーパにミーケルは苦笑いした。     
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