檻の鍵

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 ヴィダルはその視線を受け頷く。無表情に見えたその顔に明か暗かの線引きがあるとすれば、限りなく境界に近い明だった。 「俺は制約でこの壁を超えられなくなった。壁からすごく遠くにいくこともできくなった。これが俺とヴィダルの母さんが執り行った契約だよ」  ルシアは少しの間カイの言葉を頭で反芻していた。続いて「はて?」という言葉がルシアのその頭を支配する。直後、何かをやり遂げたような満足そうな顔でヴィダルと見つめ合っているカイに、やっとのことで問いかける。 「よくわかったわ、カイ。でもその話は、あなた話せないって前に言ってなかったかしら……? 」 「俺が俺以外の人間に契約の内容を話すことは禁じられてる。それは契約違反になるから……」 「じゃあどうして?」 「契約違反になると契約が破棄されるから」  カイのその言葉のあと、地震のように世界が揺れ始めた。ルシアは小さな悲鳴を上げると、思わず石畳の壁に身を預ける。  カイはその揺れに動じることもなく、壁に立て掛けてあった斧で思い切りルシアの檻を叩いた。かの青白い閃光が走ることはなく、錆び付いた檻の格子はいとも簡単に破壊された。  ルシアはその様子を驚いてただ眺めていた。驚きすぎて声も出ない。 「出てこいよ、ルシア」     
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