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カイはその言葉を聞き、眉をしかめた。ヴィダルの言っている意味がわからなかったのだ。
――故郷の国で最期を迎えることがそんなに不思議なことか?
カイは悩む間もなく答えた。
「俺はここから離れない。一緒に死んで欲しいって言ったはずだぞ。それに俺の故郷は、ずっとこの森だ」
ヴィダルはしばらくの間カイを見つめたままだった。二人はお互いに目を反らさなかった。
――わかった。彼女は?
その言葉を聞いたカイがルシアの方へ駆け寄ると、彼女は大地に身体を横たえたまま、いつの間にか眠っていた。顔が草の露で濡れている。
「ルシア起きて」
カイがルシアの肩を少し揺らすと、彼女はすぐに目を覚ました。
「……ごめんなさい、思わず寝てしまったみたい」
すぐに身体を起き上がらせたルシアは、まだぼやける目をこする。
思わず寝るとはどんな心理状態なんだろうと、またひとつ彼女の魅力を知る。
日の光の下で見るルシアは、いっそう美しく見えた。白い肌が緑の大地によく映えている。
「レダが動く。国に戻りたくないか? 今なら間に合う」
ルシアは小さな咳払いをした。
「あのねカイ、私は檻の中でずっと考えていたことがあったのよ」
「……なに?」
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