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スーパは初めて見るこの壁を渋い顔で眺めながら、肩に乗せたサルタエルの足を撫でた。サルタエルは首を小刻みに動かしながら、鋭い眼で何か獲物はいないかと辺りを見渡している。
「あらスーパ、居たのね」
マチルダは涙で濡れた顔を拭きながら言った。
「いつからその目は飾りになった? こんなイイ男が見えなくなるなんて」
大げさに眉を上げてスーパが答える。その冗談を遮るようにミーケルは言った。
「マチルダ、カイに手紙を書いたんだ。サルタエルに届けてもらう。お前も何か、書くか?」
マチルダはミーケルの顔をまじまじと見つめたあと、答えた。
「書かないわ。あたしが書きたいことはきっとアンタが全部書いてるもの」
サルタエルは白い翼を大きく羽ばたかせると、スーパの肩を離れた。そしてぐんぐんと空を目指して上がっていった。薄暗い森の中で、白いサルタエルはもう一つの月のようだった。ついに壁の先まで昇り詰めると、スーパ達からは見えなくなった。三人はしばらくそこに立って、誰も何も言わずにその様子をただ眺めていたが、最初に口を開いたのはスーパだった。
「さて、帰ろうか」
「サルタエルを待たないの?」マチルダが言う。ミーケルも同じ気持ちでスーパを見る。
「カイだって返事が書きたいだろ? サルは明日の昼にでも勝手に帰ってくるさ。彼からの手紙を持ってね。俺たちだって、夕飯の続きをしなくちゃならない」
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