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きっとお前はこの手紙を読んで、どうしてだ?って怒るだろう
ごめんな。
もう、手紙はこれきりにしよう。サルタエルがドラゴンに見つかると可哀想だから。
スーパにもよろしく伝えてくれ。それから、マチルダにも。
お前たちの幸せをずっと願ってる。
カイ ”
これを読んでミーケルの手は震えた。
カイはこっちにもう戻れないと諦めている。
向こう側からも壁を越えらる要素がないんだ。
カイは諦めている。
ミーケルは己の無力さを呪った。
カイが生きていることに、ひとまず安心などという気分には到底なれなかった。
どうしてだよ。どうしてこんなことになっちまったんだ。もう会えないなんて嫌だ。
こみ上げる涙を、何度も飲み込んでこらえる。もし泣いてしまったら、それは諦めを認めたことになるような気がしたから。
やり場のない怒りと悲しみがミーケルの胸に広々と陣を取り始めた。
今夜もラックスの酒場でマチルダと会う約束をしていたが、足取りは鉛のように重い。
マチルダがカイの手紙を読んだら、きっとミーケルと同じ気持ちになるだろう。
カイの事を一番心配しているマチルダだ。簡単に想像がつく。
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