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「壁のことを調べようと思う。壁伝いに馬で走って、どこまであるのか調べる。それにずっと遠くまでいけば、何か知ってる人がいるかもしれない」  マチルダはミーケルの今にも泣きそうな顔から目をそらさずに答える。 「そのこと、一晩中でも考えたの?」 「いや……この手紙を見てすぐに」  ミーケルは叱られた犬のように哀れな目でマチルダの視線を受け止める。 「私は、城に仕えてた方がずっと壁の情報を得られると思う。あんたが一人で調べるより、城の調査隊の方がずっと早くあの壁のことを調べ終えるわ。一度辞めたら再入隊するのは難しいってアンタが一番わかってるはず。それに……」  マチルダは、テーブルに広げて置いた手紙をそっと折り畳みながら言った。 「よく知ってるでしょ? カイは一度言ったことは絶対覆さないってこと。壁にドアがあったって戻らないって書いてある。アンタが城に仕えて国を守るという目標を捨ててまで、そんなことをするのをあいつは喜ばない」  ミーケルは無意識に顔を伏せ目を閉じてしまった。薄々は、もしかしたらわかっていたのかもしれない。気づかないふりをしようとしていた。 「……何となく思ったの、カイは壁のこと何か知ってるんじゃないかしら」  カイは自分の意思であちらに残ることを決め、そうしたのではないかと、本当に一瞬だけ、そう思ってしまったことを。     
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