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そして、もうひとつ不思議なことが起こっていた。
この壁ができてからというもの、ドラゴンが全く姿を表さなくなったのだ。かなり高さがある壁とは言え、ドラゴンには翼がある。入ろうと思えばいくらでも入れるはずだった。今までは、たまにいたずらにドラゴンが現れては人間を襲っていた。それにどれだけずいぶんの人が脅え暮らしていたことか。ドラゴンは個体数こそ多くはないものの、一匹でかなりの脅威になる。ズーライトと呼ばれる鉱石を嫌い、人々はこれを使って剣や柵を作り自衛していたが、それも絶対ではなく気休め程度だった。
城の科学者は、この壁の成分にズーライトと同じものが含まれているのではないかと考えた。壁を少し削り成分を調べることを許され、これを実行したができなかった。
壁は、どんなに良く切れる刃物で削ろうとも、傷一つ付かないのだ。
人々はこの人知を越える正体不明の物体に恐怖を覚えた。そして積極的にこの壁に近付こうとするものなどいなくなった。
例え、王室から下された戒律がなかったとしても。
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