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 ルシア。カイはその名前に聞き覚えがあったが、今思い出している余裕はない。それよりもこのルシアの言葉に、遥か昔の微かな記憶など吹き飛ばされてしまった。それほどまでに驚愕した。  この人はこんなに暗い地下に何年も一人っきりで閉じ込められていたというのか。 なんてこった。人間に会ったのも久しぶりだって?   ……自分と同じような人がいたとは。それも、こんなに近くに。 「待ってて、そこから出してやるよ」  カイはルシアの返事も待たずすぐさま家に走った。走りながら様々な考えが頭をよぎる。  壁ができレダからカイが離れて、気の遠くなる程の時間が過ぎていた。  もう人に会うことなど二度とないと思っていたがそうではなかった。  一体誰がなんの目的で彼女をあんなところに閉じ込めたのだろう。もしかすると罪人なんだろうか? まだ若い娘が一体何の罪で。  しかしカイにとって、ルシアと名乗った少女が何かしらの罪を背負っているかということなど、どうでも良かった。およそ百年ぶりに自分以外の人間に出会った喜びの方が遥かに勝っていたのだ。  カイは物置小屋から斧を探しだしそれを握りしめると、ひとときの時間さえ惜しむかのごとく、すぐにルシアの元へと駆け出した。     
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