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 ルシアは檻の中から外を眩しそうに眺めていた。外と言ってもここからはまだ土と少しばかりの空しか見えない。その小さな空からの光はとても眩しかった。どこからか鳥のさえずりや木の葉のざわめきが聞こえてくる。時に遠くで、時に近くで。その様子だけで、この世界の広さを感じとることができた。  白い蝶がヒラヒラと漂っている。格子をくぐりぬけてルシアの鼻先に止まる。ルシアは思わず笑った。そしてまだ自分が笑えることに驚いた。 「お待たせ!」  上からカイの声が降ってくる。息を切らして笑いかける彼の顔には汗が光っている。  手には年季の入った斧を持って。 「待って、私は……」 「危ないから下がってて!」  ルシアが鉄格子から離れたことを確認すると、カイは思い切り斧を振り上げ、そこに打ち付けた。  それは細い鉄格子だった。相当古いものらしく錆び付いてもいた。この一撃で一本破壊できるのは確実だと、カイは当然のように思っていた。それがどうだろう。斧と鉄格子がふれあう瞬間、青白い光が火花のように無数に飛び交い、カイは腕に果てしない抵抗を感じた。 「うわっ!」  たまらず手を離すと、斧は檻とは逆の方へ飛んでいく。カイは尻餅をついたままその方向をただ黙って見つめていた。 「……大丈夫?」  ルシアが声をかけたが、カイにはその声が届いていないようだった。手のひらをじっと見つめたあとそれを握りしめる。肩を落とし、眉間にシワを寄せ唇を噛んだ。 「クソ……」     
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