契約

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 ルシアは、久しぶりの食事の一口目にまずむせた。 「大丈夫?」  格子の間から食べ物だけを入れる分には、あの火花は発生しないようだ。ただ、このやり方はとても気分が悪い、カイはそうやって中に何かを入れる度に胸が痛くなった。  普通に渡せたら。テーブルを挟んで明るい部屋で食事をすることができたら、どんなにいいだろう。 「……とってもおいしいわ。今まで食べたどんな物より」  ルシアの頬に涙が流れたのを見て、カイの胸はますます痛んだ。  ただの酸っぱいリンゴだ。家の近くの木にいくらでも生っている。何か料理を作ればよかったのだが、とにかくすぐに何かを食べさせたかったので、一番手っ取り早いこれにした。 「イエスかノーで答えてくれたらいいんだけど……もちろん、答えたくなかったらそれでもいい」  食事を終えたルシアとカイの会話は終わることがなかった。まるでこれまでの孤独な時間を埋めるかの様に、特にカイはとるにたらない些細なことまで話し続けた。ラックスのおっさんの髪の毛にまつわる話を終えたとき、ついにカイは核心にせまる質問を投げ掛ける。 「ルシア……君はドラゴンと契約してるのか?」     
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