契約

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 聞いてみたもののカイは、この質問の答えは100%イエスだろうと踏んでいた。檻を越えられない不思議な(かせ)、長い間何も食べなくとも生きていられる体、普通の人間ではない事を説明するには十分だった。  しかし、契約。その言葉を聞いたとたん、ルシアの顔から笑顔が消えた。それを見てカイは、機会を誤ったと瞬時に理解した。  ルシアの顔は次第に曇っていく。カイは質問を取り消したい思いに駆られたが、彼女の言葉を待つことに決めた。 「ここに入る前、似たような事を聞かれたわ。私には何のことかわからなかった」  とても嘘を言っているようには見えなかった。そして、無神経にそんな質問をして苦しい過去を思い出させてしまった事を後悔した。 「……ごめん。俺と同じだったからつい聞いてしまった。今の話は忘れて」  ルシアは、待ってと言った。 「教えてください。それが何なのか」  何もわからずにここへ閉じ込められた。ルシアはその理由が知りたかった。ドラゴンとは、契約とは何なのか。  カイはルシアをまっすぐに見つめると答えた。 「俺はドラゴンと契約した」     
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