契約

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 ドラゴンには、魔力を持つものがいる。その力は個体によって様々だが、ドラゴンが自分以外の者と契約することにより、より強力な魔法を使うことができるようになる。ただしその効果は契約者との契約のみに発動する。カイはおよそ百年前、あるドラゴンと契約を結んだ。契約の内容はカイの口から他の者に話すことはできない。それは制約のひとつだった。  それを聞きルシアは疑問を持つ。 「ドラゴンは人間の敵ではないの? なぜあなたは……そんなことを?」  カイは言った。 「まあ……色々あって。訳を話すことができないんだ、……俺が怖い?」  複雑な表情でカイを見返すルシアに問いかける。 「いいえ。随分長生きしてるからかしら……それくらいの事で驚かないわ」  彼女の優しい顔にカイは胸を撫で下ろす。 「長生きって、君は一体何歳(いくつ)なんだ」 「……何歳に見える?」 「ぷっ。なんだよそれ。俺には君がまだ15歳くらいにしか見えないけど」  その言葉を聞いてルシアは両手を頬に当て目を丸くする。 「もう随分鏡を見ていないから自分じゃわからないの。私、まだそんなに若いの? もうきっとおばあちゃんになっていると思ってた。たぶん百歳は越えてるわ」 「それ本当?」ルシアの顔をまじまじと見つめた。あまりにも顔を近づけたので、二人の視線は自然とぶつかる。カイはごめんと言って慌てて姿勢を正した。 「……じゃあ俺とますます同じだな。俺もこう見えて百は越えてるから。途中で数えるのをやめちゃったけど」  カイは空を見上げた。もうすっかり晴れている。スコップを手に取ると、また整備を始めた。     
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