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ルシア・上
【106年】
レダの国王は床に伏せていた。
妻の后は15年前に娘を産んですぐに体を悪くし、その翌年この世を去った。まだ小さな娘は母の愛をほとんど知らない。それを不憫に思った王は新しく后を迎えた。そして、この后との間に息子を儲ける。
これが運命の別れ道だったのかもしれない。
王は自分の命がこと切れる瞬間、そう思った。
・
それは着替えの最中の出来事だった。侍女のビルギットが突然すっとんきょうな声をあげた。
「あら姫様! どうなさったのですか? これは……」
ルシアがビルギットの視線の先を見ると、自分の腿の横側に何かが浮かび上がっているのが見えた。
「何かしら……?」
手を広げた程の大きさの円の中に、細かい模様や文字のようなものが所狭しと描かれている。
「まあ。いつのまにこんなものが」
ビルギットは急いで濡れた布を持ってくると、優しくそこを擦り始めた。だがインクで描かれたようにくっきりと存在するその模様は、何度擦っても色褪せすらしないのだった。
「医者を呼んで参ります!」
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