ルシア・上

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「ですが姫様、もうすぐ婚礼の儀があるというのに……お体にさわってはと私は思うのです。念のため町に降りて別の医者を探すように手配致します!」  ビルギットは昔からこうだった。姫様のこととなるといつも全力で心配し、最善を尽くす。そして時に空回りをする……。齢36にしてはまだ落ち着きが足りない面もあり。  従者において一番重要なことは忠誠心だと言う者がある。だがルシアがビルギットに無意識に求めていたものは母性だった。ビルギットは常にルシアの側にいて、時に優しく時に厳しく、ルシアの行く道を支えながら共に歩んできた。ビルギットはルシアにとってとてもかけがえのない人物だった。ビルギットもまた自分を慕うルシアを、口には出せないものの肉親のように愛情を持って接していた。二人の関係は、新しい后とルシアの?がりよりもよっぽど深いものだった。  ルシアは数ヶ月後、従兄弟であるグンナルとの婚礼を控えていたが、その時点で王はその王位をグンナルに継承しようと考えていた。もう自分に残された時間が長くないと悟っていた王は、グンナルの父である実の弟が公務を代行してくれている間に、新しい王を置くべきだと考えていたのだった。     
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