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壁は随分高く、登って越えられそうもない。だが、この壁のすぐ内側に古城があることをカイは知っていた。もちろんそこにはもう誰も住んでいない。カイのじいさんが生きていた頃、もうそこはすでに廃墟になっていたらしい。ずっとずっと古い城だ。
その古城の地下かどこかに牢がきっとあったんだと、カイは推測した。そしてそれが嵐のせいで土が流れあらわになったのではという大雑把な閃きを信じ、さっきの人影をもう一度思い出す。
ということは、中にいるのはやはり死体か? それも、大昔に閉じ込められた悪い奴の……。
彼は恐ろしくなり、とんでもないものを掘り返してしまったと後悔した。
――埋めよう。家の近くに死体があるなんて嫌だ。
本音は今すぐにでもここを去りたい。
だけど自分が掘り返してしまった以上、もとに戻すのも自分の役目だ。
なんと言ってもここには自分しかいないのだ。
カイは重たい足を引きずって壁の近くに戻った。なるべく見ないようにしよう。そう思いながら掘り返した土を、放るように地面の割れ目に落とした。見ないようにしたかったのだが……。
ひらりと白いものが目の端に映る。心臓がびくりと跳ねた。
――なんだ、さっきのは。明らかに鉄格子の中で何か動いた。
動悸が激しくなる。
――迷い混んだウサギでもいるんだろうか?
いや、それならわざわざ俺がいるところに近寄らないだろ。じゃあなんだ?
――確かめるしかない。
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