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「何故かヘルマン氏以外の医者を入れるなという命が随分前から出されていたようで……。すみません、私の確認不足で勝手な事をしてしまいました」
「どうってことないわ。私だってそんなこと知らなかったもの……」
「いえ、それは……。でもどうしてでしょうね?」
ルシアはビルギットをなだめるように、ゆっくりと口を開く。
「お母様はお父様の体調が悪くなってから、不安を抱えて少し神経質になっていらっしゃるのよ。私の事なら大丈夫。ヘルマンがまた診に来てくれると言っていたし」
「申し訳ございません」
くやしい。できるなら、姫様を連れ出して医者の所へ連れて行ってやりたかった。
実を言うとヘルマンは苦手だ。愛想は悪いし、挨拶をしても返事すら返さない。
何度かすれ違うことはあるがいつも変な匂いを纏って目をギョロギョロさせているんですもの。
ビルギットはそこまで文句を思い浮かべて、やめた。ルシアが心配そうな顔でビルギットの眉間によったシワを見つめていたからだ。
夕刻を知らせる鐘が響いた。
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