ルシア・中

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ルシア・中

 昨夜はあまり眠れなかった。うとうとと眠りにつこうとすればもうすでに外はほの明るくなっている。  朝もまだ早いと言うのに部屋の外がバタバタと騒がしい。当然、こうなることは昨日の晩からわかっていたことだ。  そのやかましい足音が自分の部屋の前で止まるのがわかった。  ……来たか。  ヘルマンはドアが開かれるのを待った。  間髪いれずノックもなしに半狂乱の女が飛び込んで来る、その女は顔面蒼白の侍女(ビルギット)。ヘルマンは言葉を発する間もなく、胸ぐらを掴まれていた。 「お願い姫様を助けて! 姫様が……! 姫様が!」  その手は冷えきった上に震えている。 「落ち着け、それにこの手を離せ」  よくもまあ他人にここまで執着できるものだ。ヘルマンは心底煩わしそうにビルギットの手を払い除けた。 「お願いよ、早く来て!」  無駄だ。もう遅い。  そう話したらこの女はどんな顔をするのだろう? ・ 「お亡くなりになられている。女王陛下をお呼びしろ」  ルシアのベッドの横でヘルマンにそう告げられたビルギットは、唇を青くしてガタガタ震えている。やがて目からは大粒の涙をこぼし始めた。     
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