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「なぜです姫様! 昨日まであんなにお元気だったのにっ……!」
ビルギットは膝から崩れ落ちた。
ヘルマンには何の感情も沸いてこない。
まだ眠っているのかと思うほど安らかな表情で死んでいるルシアの顔をただ冷ややかに眺めていた。部屋にはビルギットの泣き声だけが響き、ヘルマンはそれを耳障りに感じている。
早く陛下を──……そう言いかけたとき、自身の目と耳を疑う。
「何事なのビルギット……、なぜそんなに泣いているの? それにヘルマンまで」
眠そうに目を擦りながらルシアはその身を起こしたのである。
心臓を乱暴に掴まれたかのように、胸の奥がぎゅうっとなった。
ビルギットさえ息をのみ声を殺す。
ヘルマンの時間は凍り、指の先さえ動かせなくなった。
バカな、こんなことありえない。
昨日の夜ルシアに毒薬を渡した。
彼女は素直にそれを飲んだのだろう、朝起きる頃にはもうその体は冷たくなっていた。それはビルギットの錯乱ぶりからもわかるし、なにより自分自身が先ほど確認したことだ。心臓は動きを止め呼吸もなかった。それなのに今、自分の目の前には、動いて声を発するルシアがいる。
夢でも見ているのか。それなら一体どこからが夢なんだ。
「姫様!!」
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