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ヘルマンが視線をビルギットの方へやると彼女はその役目を理解し、事の顛末を話し始める前にまずこう告げた。
「陛下、これからお話しすることは耳を疑う物になるかと存じますが、ひとまず姫様の無事をここに報告いたします」
后は表情ひとつ変えずに頷いた。
今朝の一部始終を語り終えたビルギットに、后は優しい顔で言った。
「ビルギット、ありがとうございます。この先はヘルマンとお話しますから、あなたはルシアについてやっていてください。あの子を頼みます。」
ビルギットが退室した途端に后の表情が冷たくなった。
「どういうことなのです、ヘルマン」
「私も聞きたいくらいです。どう考えてもおかしい……一度死んだ人間が、生き返るなどと!」
「何かの間違いでは無いのですか」
「念のため、今夜も薬を飲むよう伝えていますが……」
后は玉座の肘掛を人差し指で叩き始める。
「それだけでは駄目。他の人間にも同じ物を飲ませて確認なさい。」
ヘルマンはぎょっとして后の顔を見た。彼女の端正な顔立ちが怒りの色に染め上げられると、普通の人間のそれよりもひどく恐ろしく感じる。言いしれぬ迫力にヘルマンは情けなくも目を合わせることが出来なくなってしまった。
「ですが、一体誰に……」
今にも消えそうな声のヘルマンとは反対に、后はピシャリと次の言葉を放つ。
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