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「そんな者、誰でも良い! 兵士でも侍女でも……この城には掃いて捨てるほど人間がいるでしょう!」
怖い。ヘルマンは単純にそう思った。人並みに年齢と経験を重ねているが、自分よりも若い、しかも女性に怒鳴られて怯えることなどこれが初めてだった。
それから数週間が過ぎた。
ルシアはまだ生きていた。あれから何度か薬を飲ませたが、その度にルシアは息を吹き返したのだった。ヘルマンが実験に薬を飲ませた数人は、間もなく全員死んだ。
「どういうことなのっ!! なぜあの娘は死なないの!」
深い眠りについている王の部屋で、后はヒステリックに声を荒げた。
「陛下……どうかお静かに」
ヘルマンは慌ててそれを諫める。
「やはりあの娘は魔物と契約しているのかしら。どう考えても普通じゃないもの」
ヘルマンも、薄々そのことは考えていた。しばらく静かな時が流れる。
ほどなくして扉を叩く者があり、部屋のドアがゆっくりと開かれた。
「ラピエス殿下」
王とよく似た優しげな顔立ちの男が現れた。
「おはようございます陛下。兄上のご容態はどうか? ヘルマン。」
王不在の玉座で代わりに公務を行っているのは王の弟だった。
「はい……特に変わりもなく安定されております」
「そうか……」
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