ルシア・中

5/7

4人が本棚に入れています
本棚に追加
/151ページ
「そんな者、誰でも良い! 兵士でも侍女でも……この城には掃いて捨てるほど人間がいるでしょう!」  怖い。ヘルマンは単純にそう思った。人並みに年齢と経験を重ねているが、自分よりも若い、しかも女性に怒鳴られて怯えることなどこれが初めてだった。  それから数週間が過ぎた。  ルシアはまだ生きていた。あれから何度か薬を飲ませたが、その度にルシアは息を吹き返したのだった。ヘルマンが実験に薬を飲ませた数人は、間もなく全員死んだ。 「どういうことなのっ!! なぜあの娘は死なないの!」  深い眠りについている王の部屋で、后はヒステリックに声を荒げた。 「陛下……どうかお静かに」  ヘルマンは慌ててそれを諫める。 「やはりあの娘は魔物と契約しているのかしら。どう考えても普通じゃないもの」  ヘルマンも、薄々そのことは考えていた。しばらく静かな時が流れる。  ほどなくして扉を叩く者があり、部屋のドアがゆっくりと開かれた。 「ラピエス殿下」  王とよく似た優しげな顔立ちの男が現れた。 「おはようございます陛下。兄上のご容態はどうか? ヘルマン。」  王不在の玉座で代わりに公務を行っているのは王の弟だった。 「はい……特に変わりもなく安定されております」 「そうか……」     
/151ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加