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ラピエスは眠ったままの王を見つめながら少し悲しそうな顔をみせる。
「……では私はこれで失礼致します」
ヘルマンはそういうと、静かにそこから去った。
「陛下もお辛いでしょうな」
「それはお互い様ですわ……」
先ほどのヒステリックな様子とは別人のように、后は穏やかな仮面を被っていた。
「そういえば不思議な話がありまして。このレダの外れの森……古城がある辺りに、なんでも巨大な壁が現れたとか」
「壁、ですか」
「ええ。私もまだ確認できておらんのですが。砦の兵士から報告がありましてね……。変な話でしょう?」
その時后の瞳が色を変えた。
「それなら私の親衛隊に行かせましょう。あなた方も何かとお忙しい身。」
ラピエスは一瞬驚いた顔を見せる。
「いや、そういう訳には」
「いえ、私もずっと考えていたのです。何かお力になれる事があればと。古城の辺りでしたら長官はそこらの生まれですし地理もわかります。腕も立つので万が一ドラゴンと遭遇しても問題ありません。どうか殿下のお力にならせて下さい。」
「それは誠に有難い。姫と息子の婚礼の儀までに、どうしても片付けたい案件が山ほどありましてね。……ですが、本当に宜しいのですか?」
后は優しい微笑みを携えて言う。
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