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「おぞましい……。だが意識が戻り暴れられてもかなわん。なるべく距離を稼ぐとしよう。姫様が死んでいるうちにな」
黒馬の滑らかな毛が月夜に光っていた。
城から古城のある森へ行くには、砦を経由して何日もかかるのだった。
アールクヴィストとオークランスは、后の命令通りに古城を目指した。
二人の真の目的は壁の調査では無い。誰も近づかない古城にこの死なない姫を幽閉することだ。
森にはただでさえ人が近付かない。森といえども王家の領地であるし、森番もいる。
そして人間の脅威であるドラゴンの生息地でもあるとされている。
都合の悪い人間を隠すには丁度いい場所だった。
正体不明の壁とやらが現われたのも都合がいい。壁の調査、と触れ接触を禁止すればいいのだから。
こうして二人は幾日もの時を経て、森の古城へとたどり着く。
姫はその間何度も息を吹き返したが、その度にヘルマンから持たされた睡眠剤で眠らされたり、それが間に合わないと殺される日もあった。それを全て引き受けたのはオークランスだったが、元々あった、気味が悪いという感情が日を追うごとに大きくなり、古城に着く頃にはもう限界を迎えた。森に着いた際に再び目覚めた姫を見て彼はついに嘔吐する。
アールクヴィストは人ごとのように笑う、繊細な奴め! と。
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