ルシア・下

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「お前はもうそこで休んでいろ、あとは私がやる」  何度命を落としても蘇る姫とあっても、さすがに顔には疲労の色が見える。食事はおろか水もまともに与えられていなかったし、体調は最悪だった。  目を覚ました(ルシア)は辺りを見渡す。暗く陰気な森。冷たい風が頬を突き刺した。ザワザワと煩く鳴る枯れ枝や葉の音は恐ろしい悲鳴にも聞こえる。  立ち上がろうとするも、フラフラと焦点が定まらない。もつれた脚が自分の意思に逆らいただまっすぐに伸び、ルシアの世界は反転した。頭部に強い衝撃を受けたがもう声も出ない。起き上がる気力はなくなっていた。今、自分がどこにいるのかも、なぜこうしているのかも思い出せない。わかるのは、こんなに寒くて痛い思いをしたのは初めてだということだけだ。 「おはようございます、姫」  ルシアは聞き覚えのある声に耳を澄ませた。目だけを動かし声のある方を見ようとすると、その声の主に乱暴に抱きかかえられる。ようやくルシアの目に映ったのは、母の親衛隊の長官、アールクヴィストだった。  まったく状況が掴めない。見当もつかないこの状況に、ルシアはただ身を委ねている事しか出来ずにいた。     
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