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こんなことあるはずない……夢なら早く覚めて。目を覚ませばビルギットが笑顔でこの夢を笑い飛ばしてくれる。怖かった、とビルギットの胸に優しく抱かれたい。
暖かな、優しい笑顔を。真っ白で清潔な見慣れた給仕服の香りを。いつも抱きしめてくれる、あの腕のぬくもりを。早く思い出させて。
そう思って握りしめたルシアの手の平にあるのは、汚く細かい砂利だけだった。
力を振り絞り、起き上がる。
「アールクヴィスト……!」
その今にも消えそうな声に、彼は振り返った。
「どういうことか説明して」
アールクヴィストは立ったまま、ルシアを見下ろして言った。
「姫様、魔物と契約して永遠の命を手に入れたそうですね?」
身に覚えのない話に、ますます頭が混乱した。
「どういう事?」
「そんなことしなければ、幸せに死ねたものを……なんと気の毒な」
回りくどい言い回しに、不安な気持ちがどんどん膨らみを増していく。
「もう城にあなたの居場所はありませぬ。あなたは疫病にかかり、その骸は焼き払われたこととなっております。安心しなさい。あなたの侍女も一緒です」
ルシアの心臓は嫌な音を立てて激しく動き始めた。ルシアは震える足で立ち上がる。
「どういうこと!? ビルギットをどうしたの!? 答えて! アールクヴィスト!!」
不安に胸が震える。全身が水浴びをしたように冷たい。
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