ルシア・下

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 こんなことあるはずない……夢なら早く覚めて。目を覚ませばビルギットが笑顔でこの夢を笑い飛ばしてくれる。怖かった、とビルギットの胸に優しく抱かれたい。  暖かな、優しい笑顔を。真っ白で清潔な見慣れた給仕服の香りを。いつも抱きしめてくれる、あの腕のぬくもりを。早く思い出させて。  そう思って握りしめたルシアの手の平にあるのは、汚く細かい砂利だけだった。  力を振り絞り、起き上がる。 「アールクヴィスト……!」  その今にも消えそうな声に、彼は振り返った。 「どういうことか説明して」  アールクヴィストは立ったまま、ルシアを見下ろして言った。 「姫様、魔物と契約して永遠の命を手に入れたそうですね?」  身に覚えのない話に、ますます頭が混乱した。 「どういう事?」 「そんなことしなければ、幸せに死ねたものを……なんと気の毒な」  回りくどい言い回しに、不安な気持ちがどんどん膨らみを増していく。 「もう城にあなたの居場所はありませぬ。あなたは疫病にかかり、その骸は焼き払われたこととなっております。安心しなさい。あなたの侍女も一緒です」  ルシアの心臓は嫌な音を立てて激しく動き始めた。ルシアは震える足で立ち上がる。 「どういうこと!? ビルギットをどうしたの!? 答えて! アールクヴィスト!!」  不安に胸が震える。全身が水浴びをしたように冷たい。     
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